
今回はいつもとはちょっと趣が異なるコラムです。
皆さんは、「上京」したことがありますか?
この時期は毎年多くの人々が、進学のため、就職のため、
故郷を離れて東京に出てきます。
かくいう私もその一人。
ちょうど6年前に大阪の未開地から、なーんとなく東京に出てきました。
しかし冷静に考えてみると、「上京」ってめちゃくちゃ大きい行為ですよね。
自身が生まれ育ったコミュニティを離れ(ある意味捨てて)、
何の繋がりもない場所に行くんですから。
故郷とは、変わらない場所、いつでも自分を待ってくれる場所。
なーんて思いがちですが、全くそんなことはありません。
故郷は俺がいようがいまいが、着実に変化していくし、
そこで生きる人々も、どうしようもなく変わっていきます。
同窓会などで久しぶりに帰ったりすると、
旧友たちの人間関係や街並みの変化に、
どこか自分だけ取り残されているような、そんなセンチメンタルを感じてしまいます。
そんな「上京」を見事に描ききった映画作品。
それが今回紹介する「ニューシネマパラダイス」です。
シチリア島で母と暮らす少年は、ある日、映画技師のおじさんと友達になります。
彼らの関係は歳を重ねるごとに育まれていき、もはや親友と言える仲になりました。
そして不幸な事故でおじさんが失明してからは、
少年が映画技師として代わりに働くようになります。
つまり少年とシチリア島は、強い人間関係によって結びつけられていたのです。
しかし、ある時、おじさんは彼に告げます。
「本土に行くんだ。そして故郷を忘れろ。二度と帰ってくるな。」と。

それに従い少年は本土に渡り、そこで映画人として成功しました。
そして彼が故郷に帰ったのは、おじさんが亡くなったという知らせを受け取ったときでした…。
俺は全ての「上京」はこういうものだと思います。
程度の大小こそあれ、我々は何かを捨てて東京に来ます。
そしてその何かは、残された場所で、
亡くなったおじさんのように、確実に変化し、我々を置いてきぼりにするんです。
・・・果たしてお互いが変化する中で、変わらないものは存在しえるのでしょうか。
その答えを確かめたくなったとき、
俺はいつでもニューシネマパラダイスのラストシーンを観ます。
もしよかったら、あなたも是非観てみてください。
ちょいと一緒に確かめてやりましょう!